キビレ(キチヌ)の味/浜名湖



41cm=で1.32kgのこの魚は何年魚でしょうか。なかなか立派な物です。
クロダイだと9年生位のサイズですが・・。

この魚が成仏してから推定5時間後に上の写真を撮り、ヘッドレスにして冷蔵庫に置き、翌々日に調理を始めました。


初日(死後約60時間後)は生食と潮汁に卵と肝の煮付を。

刺身 2種(平造りと皮霜薄造り)


 平造り(左側)

透明感の残る白身と淡い紅色の血合いの取り合わせが綺麗なうえに、皮目の脂が照って、その美しさに見惚れました。わずかな醤油を付けて口に入れてみたら、ほんのりの芳香と控えめな旨みが、脂を伴い、甘みとなって口中に広がりました。ご立派。堅いのは好きではないので、少し薄めに切りましたが、柔らかいのにもっちりの弾力が感じられて正解でした。ちょっと厚めだと食感が変わり、味にも出ました。

 皮霜薄造り(右側)

平造りと比べると、身が薄いだけに旨みは弱くなるはずですが、皮の旨さが支えるせいか、同等に旨かったです。皮と身の間の脂をすべて摂れるので、こちらの方が旨いようにも感じました。厚い皮も湯引きと包丁目のせいで抵抗無く、コリコリと美味しく食べられました。


(うしお)


たっぷりの昆布でしっかりとだしをひいて作った潮汁には、キチヌの旨みとともに脂が出て、なかなかのお味でした。粗もしゃぶりつくして満足しました。皮も食べ応えがあって旨かったです。これだけ脂が出ると、味噌汁にしても美味でしょう。


煮付け


卵は完熟ではなかったので味はいまひとつでしたが、肝はネットリとろりの美味でした。ただ、生の時の色があまり白(黄)色っぽくなかったので、脂は少なかったのかもしれません。


翌日(死後84時間後)は

酒蒸 をポン酢で


前日から酒と塩少々をまぶして冷蔵庫で寝かせておいたものを、蒸しました。お味のほうは、、、これは絶品。高級料亭とまでは言わずとも、それなりの日本料理店で通用する味でしょう。蒸しているのですから柔らかいのは当然ですが、その柔らかさの中に身のシッカリ感が好ましく感じられました。皮も柔らかくなって、旨さ向上。ポン酢との相性は抜群です。


翌々日(死後108時間後)は

浸け焼き で。(浸漬時間は48時間)


この調理法なら、たいていの魚は美味しく食べられるので・・、当然のごとく美味でした。クセがなくて身質が良いのですから、文句無し。包丁目を×に入れておきましたが、厚い皮なので、しっかりと端まで切っておかなかったので、反りが出てしまいました。


キチヌの味の総評


夏の終わりで浜名湖内の魚ということで、クロダイ(チヌ)だと臭いがあっても不思議のない季節でしたが、今回のキチヌまったく臭いは無く、脂も程よくのって、とても美味しくいただけました。個人的にはクロダイを上回る魚だと思います。料理としては、刺身より蒸し物と焼き物の加熱調理の方が魚の旨みが出ました。醤油やコハク酸などとの相乗効果も考えられますが、生食より加熱で食べたい魚と言えるのかもしれません。


 歩留まりデータ

 全重    1320g(100%)
 ヘッドレス   900g( 68%)
 三枚おろし     580g( 44%)   
 (むき身)


今回のキチヌとその入手方法

この魚は浜名湖ではキビレと呼ばれていますので、以下はキビレと称します。見た目もそうですが、クロダイ属ですから、クロダイによく似ています。鰭が黄色身を帯びているので、黄鰭(きびれ)ということです。この魚に限らず食味の評価は場所、時期によって大きく違います。それが、外見でわかるようになれば一人前です。一般的にはクロダイより少し遅れて旬を迎える、ということになっていますが、これも場所次第。まずは外見で判断しますが、切ってみれば明らかです。この魚は頭を落とす出刃に脂が付きましたから、ん、良いかも。腹腔内には脂は無く、代わりに卵が有りました。ヒトで言うなら妊娠6ヶ月という感じでした。そうなるとボチボチ身質が落ち始めているかな、と不安になるところでしたが。上記の味の感想どおり、目に狂いは無かったようです。


さて、ここで種明かしです。実はこの魚は私が釣った物ではなく、近所のスーパーで買いました。浜名湖の角立て網で獲れた地魚を扱うこのスーパーでは、漁期にはほぼ毎日、獲れたての魚が並びます。今回のキビレは、売り場に並ぶものとしては最大クラスで、普段はコノシロを中心に、セイゴやクロダイ等が並びます。この地の食習慣なのか、キビレよりセイゴやクロダイの方が単価は上のようです。ここで売られる魚は、たしかに鮮度が命の魚としては魅力がありますが、全体に魚種と型が今一つで、私はコノシロとキビレくらいしか買いません。過去にはギマなんという珍魚も食してみました。ともかく市場では相手にされないような物でも、鮮度でそれなりの値を付けるところが、、ちょっとナンデスがね。浜名湖産のアサリも、熊本から旅して来る物より高価なんですよ!?。それにしてもキビレが小売でキロ300円は安かったのですが、おかげで釣る気にはなりません。チョチョット釣れてしまうくらいなら竿を出しますが・・。この魚を釣るまでには、相当の餌代と時間がかかりそうなので、今後も買って済ませるでしょうね。漁師さんご馳走さま、デス。


しばらく釣りをしていなくて、まともな魚を食べていなかったので、いゃー旨かったです。さて少しは涼しくなってきたので、ボチボチ釣りに行くかー。

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