コショウダイの味/浜名湖


37cmで0.86kgのコショウダイです。

この魚が成仏してから推定12時間後に上の写真を撮り、ヘッドレスにして冷蔵庫に置き、翌日に調理を始めました。


初日は粗で味噌汁(死後約30時間後)と刺身(死後約36時間後)を。

味噌汁


味噌汁にした訳は、コショウダイは過去に300g程度の小型の物しか食べたことがなく、本当の味を知らなかったのと、今回は活け〆でないために安全策を採ったのです。念のために、味噌に少しの味醂も足して、万全を期しました。

自家製の葉ネギを散らして、さて一口すすると。おーっ、旨いではないですか。いい出しが出ています。汁の表面にはほんの少しの脂が浮いているだけですから、脂のマスキング効果が旨さの秘密、ではありません。

まぁ、味噌汁に入れて食べられない物は無いので、旨くて当然かもしれません。でも、本当に勝負に行くなら潮汁ですから。

とにかく美味しくいただけたので、


刺身 2種(平造りと皮霜薄造り)



 平造り(前側)

んー、ちょっと早すぎましたね。もう1日寝かせるべきでした。コリコリと固く、旨味が僅かしか出ていません。活け締めでないせいもあるかもしれませんが、ほのかに磯臭いような香りも感じます。醤油とワサビを付けて食べたら、ごく普通に食べられましたから、決して不味いということではありません。今度機会があったら、熟成時間をとることにします。

 皮霜薄造り(後側)

湯引きにしての薄作りですから、テクスチャーもちょうど良く、臭いも無く、そして皮目の旨味が足されて、悪くない味でした。でも、未熟な味は、平造りと同じです。


翌日は酒蒸(死後約54時間後)と浸け焼き(死後約54時間後)を。


酒蒸


前日から酒と塩少々をまぶして冷蔵庫で寝かせて(30時間)おいたものを、蒸しました。蒸したのですから加熱のために身が締まることも無く、臭いも皆無で、前日に比べると旨みも出ていました。これは美味。ポン酢もピッタリですね。


浸け焼き



前日から浸けダレに浸けて冷蔵庫で寝かせて(30時間)おいたものを、焼きました。わずかに締まって繊維を感じましたが、歯ごたえがあるという程度のことです。アミノカルボニル反応特有の香ばしい香りに、皮目の焦げ臭がプラスに作用して、良い香りでした。旨みもはっきり出ていて、これも美味でした。


コショウダイの味の総評


今回のコショウダイとその入手方法

成長すると60cm位にもなるという魚ですから、目方では3kg位でしょうか。とすると今回の 37cm = 0.86kg は中学生ですかね。暖海の磯場を主な棲息場所とする魚が浜名湖で獲れるのは珍しいのか否か、詳しくは知りませんが、クロダイやキビレほどには見かけないのは事実です。浜名湖の塩分濃度が上がって、近年は外海に近付いてきたとも聞きますから、そのせいかもしれません。

イサキ科の魚だから旨いという意見もあるようですが、市場ではあまり評価は高くありません。お世辞にも水がキレイとは言い難い浜名湖内で獲れた魚の割には、今回の魚は臭いもクセほとんど感じられなかったですから、料理次第で美味しく食べられる魚だと思います。5.6月頃が産卵期と言われているので、食味が良くなってくるのは秋~冬、というところでしょう。今回よりもっと美味しくなるのだとしたら、私は十分イケル魚という印象を持ちました。


さて、ここで種明かしです。実はこの魚は私が釣った物ではなく、前回のキチヌ(キビレ)と同じく近所のスーパーで買いました。浜名湖の角立て網で獲れた地魚を扱うこのスーパーでは、漁期にはほぼ毎日、獲れたての魚が並びます。この日は大漁だったようで、夕方までクロダイ、キチヌ、ヘダイ、コショウダイ、セイゴ、コノシロ、ギマ等が残っていました。半額の値札を見てつい買ってしまいました。全額だったら買ったかなー、微妙です。鮮度は良いのですが、何しろ手が掛かります。釣りをする我が家では、外の屋根の下に舟形シンクを常設しているので問題ないですが、普通の家庭のキッチンで捌いたら、鱗に血に・・大騒ぎになってしまいます。つくづく釣りをやっていて良かったと思います。そうでなければ、とても鮮度が命の新鮮な魚など口にできなかったのです。今回はまたもや、漁師さんご馳走さま、でした。



追記 2018.11.01
塩焼き



またスーパーで当日朝獲りのコショウダイを見かけたので、ちょっと大きかったのですが、塩焼きで食べてみました。

このような白身の中型魚は、成仏の当日食べたのでは味がありませんから、エラ・ワタを抜いて、冷蔵庫で丸2日熟成させました。野じめからの時間でいうと、食べたのはおよそ60時間後でしょうか。

たっぷり目に振った塩が効いて香ばしく焼けた身を一口、の前に厚い皮に弾力があって、はがすと、その下には肉汁が溢れていました。口に運ぶと、身はジューシーな中に旨味があってなかなかの美味ですが、それより旨いのは皮です。

皮の旨い魚はたくさんあります、というか魚は皮目が美味と言っても過言ではないはずです。このコショウダイも、ご他聞にもれず、皮が美味です。焼いて締まる白身の魚が多いのですが、この魚は締まる以上に水分が豊富で柔らかくて食べやすく、総じて美味しくいただけました。塩焼きもうまいものですね、再発見。コショウダイは干物や漬魚もイケそうです。


コメント