スズキの味/浜名湖産の魚


浜名湖には、角立て網という定置網漁があります。浜名湖岸のスーパーでその漁獲物が販売されています。午前10時頃に、敷いた氷の上に並べられても、なお動いている物もある程度の鮮度です。

釣果無しの釣りの帰りに立ち寄った夕方、たまたま見かけたのがこのスズキ。誰にも買ってもらえずに、居残り組の中でひときわ目立った大物でした。

手間は掛かるものの、これ1尾で色々楽しめそうだったので、お供のキビレとともに身請けして帰りました。すぐにヘッドレスにして、冷蔵庫へ収容して、翌日おろしました。

活締めではなく野締めのせいなのか、購入以後に死後硬直が見られませんでした。売り場に在るうちに、硬直と解硬があったのでしょうか??。

兜焼き (漁獲1.5日後)


丸ごとでは食べにくいので、梨割にして焼きました。脳内のジュースが流れ落ちないように割った面を上にして両面から焼いたので、美しくない仕上がりになってしまいました。

63㎝ありスズキと呼べるサイズとはいえ、頭の可食部はわずかです。浜名湖内で漁獲されたものですから、多少は構えたのですが、その身を口に運んでも匂いはありません。

かみしめると旨味が湧いて出ました。ほー、良いじゃないですか、これ。後頭部と頬の肉が主ですが、どちらも美味でした。そう、目玉はもちろんの美味でした。明日は視力が上がっているかな、と烏の気分。

もつ煮 (漁獲1.5日後)


胃は裏返して洗い、浮袋も同様に、卵巣は血管をしごいて血抜きし、肝臓は静置して血抜きしました。短時間で煮上げて、さてお味を。どれも匂いは無く、畜肉のモツとは大違いです。

卵は未熟ゆえの若い味ですが、いただけます。肝臓はあっさり系の美味。浮袋はモチモチの食感は楽しめますが、味という味は感じられず、コラーゲンの塊という感じです。胃袋は弾力が強く、煮足りないのが明らかで、味を感じる以前でした。

総じて、ぜひ食べましょう、とお勧めするほどの味ではなかったのですが、私はまたスズキに出会えたら食べると思います。

アラ汁 (漁獲2日後)


とても食べにくい物ですが、アラをそのまま捨てるのはあまりにもったいなく、魚への感謝の気持ちを込めて、大型魚の場合には必ずのように作ります。

さっぱり系の印象のあるスズキですが、汁には脂が浮かびました。手近にあった生姜を一緒に煮て、青ネギの小口切りを天盛りにして、熱々をいただきます。

一口すすって、旨っ。スズキの濃厚な出汁と、味噌の旨味だけで十分です。潮汁も良いのですが、やはり味噌の旨味が加わる相乗効果にはかないません。味噌の無い国の人は可哀そう。食べにくい身もせせって堪能しました。これは、S級のB級グルメ。

刺身 (漁獲2.5日後)


スズキと言えば夏の活け物の洗いが有名ですが、それ以外のシーズンなら普通に刺身で食べる方が良いでしょう。身が柔らかそうだったので、平造りにしました。透明感が少し薄れてきた食べ頃だったはずです。

んー、クセが無くて食べやすい旨さですねー。万人向きでしょう。旨味も上品さを壊さない程度にあります。見直しました、スズキさん。

酒蒸し (漁獲2.5日後)


長らくご無沙汰のスズキだったので、味を思い出すために蒸してみました。えっ、こんなに柔らかい魚だったですか。とろけるような優しさに、たっぶれの旨さが含まれている身は、"極"はともかくとして、"上"の味です。下味の酒塩だけで美味でしたが、柚子を絞ったら、もう、言葉は出なかったです。

カマ・ハラモの塩焼き (漁獲3.5日後)


魚体の割に大きくないカマと、ハラモに塩を振って焼きました。ここまでに食べた調理法で旨さは分かっていたので、特段の感動は無かったものの、旨かったですね。カマはもちろんのこと、ハラモは皮の旨さに脂も加わって、いずれも美味でした。正身だけでなくモツからアラまで、1尾丸ごと食べ尽くし、これが魚食文化というものですね、と自画自賛。

粕漬け (漁獲5.5日後)


白身の魚ですから、これも外せない調理法です。粕床を作るのがいささか面倒なので、余計に作って冷凍しておいた物を使い、丸3日漬けてから洗わずにぬぐう感じで焼きました。市販品の食品添加物まみれではない、自家製だから安心してできる調理です。

ちょっぴり焦げ目の付いた熱々の身を口に運ぶと、プーンとほのかに酒の香りが鼻をくすぐります。舌に乗せると、旨味が拡がります。スズキの旨味と酒の旨味の相乗効果です。身が厚かったのでしっかり焼いたのですが、締まって固くなることもなく、ジューシーで美味。んー、旨いなぁー。手間をかける価値のある料理です。


たまにはフレンチにでもしようかとも思ったのですが、正身で600g位しかなかったので断念しました。次の機会には、ブレゼしてオランデーズソースで食べてみましょう。

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