ホッケの味/北海道・礼文町の魚

北海道在住の釣り人なら、ホッケ釣りはお得意だと思いますが、内地人の私には手が出せません。たまたまホッケの漁期に滞在した礼文島で生のホッケが買えたので、まずは現地で調理し、余分に買った物は、ヘッドレス等の 冷凍 で持ち帰り、帰還後にゆっくり食べることにしました。

2023.09.14
道内各地の価格を知りませんが、本場といわれる礼文島の船泊漁協直営のマリンマーケットでは、30円/100gでした。歩留まり6割として可食部価格で50円/100gですから、自分の手間を無視すれば安価と言えます。ただし、漁法が刺し網なので、残念ながら鮮度極上とは言えません。おまけに、当日水揚げの物は売り場には並ばないという仕組みなんだそうです。

買いホッケ 1回目 4パック
ともかく内地でホッケの鮮魚にお目にかかる機会は皆無で、もっぱら開き干しですから、生を買ったはいいけれど、さてどうやって食べようか、と。

とりあえず、ホッケの味を知らないわけではないので、未知なる魚のように酒蒸しにするのはパスして、塩焼きと、刺身で賞味してみます。刺身は安全のために、一旦凍結処理するので、まずは塩焼きから。

塩焼き (漁獲翌日)


いつもの癖で三枚におろしましたが、二枚おろしで良かったですね。まっ、こちらの方が食べやすいので。滞在施設の調理器具には魚焼き器具が無かったので、オーブントースターで焼きました。

両面に塩を振り、キッチンペーパーで水気を吸い取り、アルミホイルに乗せて。ついでの紅いものは、卵です。子を持ち始めているんですね、9/14現在。

焼け具合を見ながらチビリちびりとやる間もなく、あっという間に焼けました。

まずは愛でて、次に香りを。焦がすほど焼かなかったので、香ばしさはないものの、ほのかに好もしい香りがあります。

口に運ぶ前から滲みだしたジュースが見え、期待できます。口に入れると、あー、やはり干物とは違う。やさしい旨味がジュースとともにホクホクの身から溢れ出ます。

脂はほとんど感じられない程度でありながら、焼いても締まらず、少々口触りの宜しくない皮目だけ無視すれば、兄貴分のアブラコ(アイナメ)と勝負ができそうに思います。(身の全体に潜む脂が見えないことを後日知る)

これが道内では大衆魚ですから、道産子は贅沢です。妬むのは筋違いですが、羨むくらいは許されるでしょう。

いやー、旨かった。たくさん仕入れて持ちかえり、冬になったら干物を作るぞー。買えればですが。

未熟卵は驚くことのない、美味しさでした。

2023.09.15
一晩考えた翌朝、さっそくマリンマーケットに行って生ホッケを注文しました。ワンサイズ上の35円/100gの物を10kg。干物用ではなく、日常調理なんでも用です。2枚におろして切り、2人分ずつ袋に入れて 脱気冷凍 して持ち帰ります。

漁獲が刺し網で、8時頃から沖に向かい、午前中から午後までかかって網から外し、1か所経由して、マリンマーケットで私が手にしたのは16時半でした。21尾/10kgでしたから、1尾重量は500g弱です。

買いホッケ 2回目 10kg
滞在中の住宅のキッチン設備で処理して、冷蔵庫に入れ終わったのは21時半でした。翌日凍結してから翌々日に冷凍ストッカーに収めます。

2023.09.16
ハラモといっても大魚ではないホッケですから、小さいです。ここで使ったのは、前日に腹骨を漉き取って一緒に切り落とした部分です。

ホッケ(はらも)の味噌汁 (漁獲翌日)


一人分には十分すぎる量だったので、あえて出しとなる物は一切加えずに水だけで煮て、安価で不味い味噌をみりん風調味料で補いました。道産の軟白ネギの青い部分を薬味に。

汁を吸うと、んー、出しの添加無しとは思えないしっかりとした嫌味のない旨さです。ハラモの量が多かったこともありますが、ここまで旨いとは想像していませんでした。

ということは、身の方は出し殻になってしまったか。そう思って食べると、全然そんなことはなく、しっかりと美味。青魚のようなイノシン酸の強い旨味ではないですから、白身の上品なおいしさです。

ホクホクほろほろの身をプルプルの皮がサンドイッチして、これは(食べにくいことを除けば)絶品です。内側の皮の口当たりの良さは当然として、外側の皮も、開き干しを焼いた時のように舌に触るウロコも気になりません。

鮮度落ちが早いのが難点の魚ゆえに、産地近隣以外ではもっぱら開き干しで、塩干魚特有の臭いが記憶に刷り込まれていますが、鮮魚のホッケを食べて、目から鱗が落ちました。こんなにうまい魚だったんだ!!

2023.09.16
初回にマリンマーケットで買った物を、当日フィレにして腹骨をすき取って凍結しました。生食の場合には凍結工程必須の魚ですが、温度を測ってはいません。推測値-25℃の冷凍庫内で約48H置いたので、安全でしょう。そもそも目視では※アニサキス(末尾記載)は肝臓等に見えただけで、身肉には見られませんでした。

おろすと薄いフィレなので、冷凍から冷蔵に移して時間が経つと、全体に融けてしまう恐れがあり、凍ったまま皮に流水を掛けた直後に、皮を手で剥ぎ取り、尾側の半分を凍ったまま切りつけました。

刺身 (漁獲翌日冷凍2日後)


半解凍状態になった物から順に、口に運びます。
なんだろう、この甘みは。そこに旨味も乗った美味。

ンーーー、なんと表現すれば良いのか。初めて食す美味に、適当な言葉が浮かびません。美味しいんです、確かに。でも、ルイベ状態なので、冷たさがマスクしてしまうようです。

次に、頭側の半分は解凍してから、血合いを外して切りつけました。


尾寄りと同様に、最初の一口は何もつけずに食べてみます。当然のように異味異臭はなし。甘みだけが口に広がります。次いで醤油だけ付けてみます。毎度おなじみの言葉ですが、相乗効果で旨味アップになります。そして、わさびモドキを付けて食べると、もう、旨いという以外の言葉が出てきません。

48時間の凍結では、身(細胞)の損傷も僅かですから、テクスチャーも生と遜色ありません。もっちりの食感が生きていますから、文句なしです。

あまり褒めると誤解されるといけないので申し添えますが、刺身の場合、価格パフォーマンス的に、現地で食べるなら、という条件が付きます。

ちなみに、国産のホッケは価格が上がっているのだそうです。だから代用品のシマホッケが使われるのだと。当然、格上は今回の真ホッケと呼ばれる北海道産ホッケです。

2023.09.18
本当は三平汁を作りたかったのですが、まだ大根を買う気になりません。冬だからこそ煮て美味しい大根ですから。というわけで、野菜を一緒に煮ない潮汁です。

ホッケの潮汁 (漁獲当日)


食べ始めたら止まりません。脇に置いてあったビールもどきの缶が、忘れられて汗をかいていました。お味はと言うと、「これは美味しいですね」ではなく「おう、こりゃうめーな」でしょう。Bでないb級グルメなんですから。

脂の浮いた汁は絶品です。カマに付いた身も美味ですが、それ以上に、頭をしゃぶって食べる僅かな身や、目玉周りと脳みそ、それに口の周りのプルプルの皮。もう、言葉は要らないレベルです。


地元漁協の参事を勤め上げた御仁から「ホッケは頭が旨いんだよ、三平汁。」と教わり、やってみて正解でした。美味なる物はどこに転がっているか分からないですね。

それにしても、これって健康でないと食べにくいですね。嚥下障害とか入歯だと。経済的にA級グルメが無理でも、健康でこんな楽しみ方ができれば、自分的には大満足です。

ちなみに、今回の礼文島滞在では、釣れた魚(ガヤ、ソイ類)やこの記事のホッケなどのいわゆる廃棄部分は全て塩漬けにしてあります。はい、魚醤 を作ります。

直買いホッケ 3回目 10kg
今回、あらを贅沢に使えたのには訳があり、この日で三度目になるホッケを買ったのです。一度目はマリンストアーの売り場の前日魚。二度目は、注文しておいて夕方受け取った当日魚。この日は、漁師の作業場で午前中の直買いです。あまり大きな声では言えませんが、アッと驚く安価でいただけました。さすがに、産地の直買いです。

2023.09.19
ホッケの大中というサイズは、ラウンドで約500gです。そのカマなので、それなりの可食部があります。そしてなにより骨離れの良いホクホクほろりの身質ですから、アラとしては食べやすいです。

白身なので薄味か、脂があるので濃い味か、悩んだ結果は薄味で。ちょっと薄すぎたかという味付けで、結果は煮汁を飲んで美味しいと感じましたから。

カマの煮付け (漁獲翌日)


その薄味の煮汁を付けながら食べてみて、、美味。ホッケも既に何品か食べた後でしたから、旨いのは承知の上なので、大きな驚きはないものの、やはり、旨い

皮の下に脂があるのではなく、全体に散っているので分かりにくいのですが、かなりの脂のようです。それゆえの美味ともいえます。

何の味かと言うまでもなく、ホッケなんですが、生ホッケの料理を食べたことがない人に伝えるなら、(ギンダラ+マダラ+コイ)÷3 でしょうか。

とにかく、はい、ホッケは旨かったですよ。偶然の出会いに感謝するとともに、そのチャンスをものにした経験値に自己満足。

ここまでが、現地で調理して食べた記事です。以下は冷凍して持ち帰った物を味わった記事です。

追記 2024.01.02

夏なら戸外で鉄板焼きにしたいところですが、冬なので味噌味の野菜ソースを敷いた大皿の上に、バターソテーしたホッケのフィレを乗せました。

チャンチャン風 (凍結保存100日)


内地ではホッケを食べるとしたら開き干しに限られるので、食べた10人等しく初お目見えの料理でした。冷まさないように、お皿の下にホッカイロを置きましたが、やはり冬の室温では、調理しながらでないと難しかったです。

とはいうものの、そもそも魚が良かったので、絶品とは言えないまでも、白身に味噌味が効いて十分な美味でした。





※ アニサキス

ホッケにはアニサキスが居ることを知っていたので、ヘッドレスにした時に観察しました。先にお見せするとホッケの印象が悪くなるのは必至なので、記事の最後にしました。


むーっ、はっきりくっきりの姿が見えます。肝臓の表面になかなかの密集度で居ます。アニ曰く「私だって地球の一員ですから生きるんです」か。まっ、棲み分け、ということに。動いている個体も居たので動画も撮りましたが、掲載は遠慮します。

そういえば、エゾメバルやソイ類のレバーは生食してしまいましたが、少なくとも臓器の表面には見えませんでした。食物連鎖の違いなんでしょうか。

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