釣った魚の血抜きの効果

魚に限らず、動物を食べる(命をいただく)際に、大型のものでは放血するのが一般的です。理屈は別の機会に譲り、それが合理的という前提で、遊漁で釣った魚について考えてみます。

私は産地市場の魚を加工する仕事を約20年経験しました。その時代には、旨い魚を食べました。昔のことゆえ、市場の衛生状態はお粗末で、魚もほぼ全てが野締めの魚でした。

血が残ったままの魚ですが、それでもアガったばかりの死後硬直中の魚は旨かったです。これが「血も味の内」ということだったのでしょう。

魚の場合には、カタクチイワシやその稚魚たるシラスのように、血抜きすることができない、あるいは現実的でない種類も少なくないので、その必要性に疑問を持つのも当然です。小アジの血抜きは必要か?、ですね。

私は、リタイア後に趣味で釣った魚を即締めして放血した魚の味が、意外にも産地市場の野締めの魚より旨く感じられずに納得がいかなかったのです。なぜ旨くないのか。

この鮮度と味(旨味)の関係は奥が深く、理屈で納得しない人の個性や嗜好も関係して、まことに難しい問題です。何を旨い(美味しい)と感じるかは、感性の問題なので。

ただ、ここで言えることは、血の旨味は新鮮だからこそで、鮮度落ちした魚に腐敗の早い血液が残っていると、量の多少にもよりますが、ほぼ間違いなく生臭く不味い物に成り下がります。

そんなわけで、新鮮なうちに食べられない、食べない(冷凍保存)ある程度大きな魚(刺身が造れる程度以上?)は、放血、脱血すべきというのが、科学的には現代の定説のように思います。

それには、実際の放血等の処置がどの程度行われる必要があるのかを知る必要があります。完璧を目指すなら、流行りつつある〇〇式仕立も優れていると思います。大型魚や事業者なら、実行すべきかもしれません。

ただし、設備や道具を揃えたうえに技術の習得も必要となると、ハードルは高いです。なので、遊漁者の私は、釣獲後すぐにエラ上部にナイフを突き入れて、背骨とそれに沿って在る上下の神経と血管も同時に切断します。


切断した時点ではすぐに心臓は停止しないので、血液凝固を避けるために水に浸けるだけで、体内の相当程度の血液が流出します。


神経締めすれば身質の維持になお良いことは分かりますが、そこまでの必要性と効果に疑問があることと、脳破壊すれば動きが止まることで、下の動画のような魚(鰓蓋)の動きも無くなり、放血量が減ることになるように思うので、あえて意図的な脳破壊はしていません。


その結果、脊椎の切断部分より下の下半身には、不随意的な動きは残りますが、大きな動きではないので、ATP(旨味成分IMPの元)消失に致命的に影響するものではないと考えます。

背骨をはさんだ 上が神経   下が血管

写真の魚はエゾメバルで、2枚の上が放血(即締め)した物で、下が野締め(放置死)の物です。背骨の下側を走る大動脈に残る血液量の違いだけでなく、身肉の色調の違いで、血が抜けた色と、血が残った色との違いがあきらかです。

上で述べたように、ナイフで切るだけの簡単作業でこれだけの違いが出るのですから、やらない理由は無いでしょう。

鋭利なナイフがあれば、かなり大きな魚でも可能です。40cm程度までの魚の場合なら、私は100円ショップで買った果物ナイフを研いで刃を付けて使っています。

放血して血が抜けた結果、旨味?も失うことへの対処は、一つには、雑味の無い魚の味に敏感になって馴染むこと。二つ目は、熟成により新たな旨味を創出すること、だと思います。

熟成については、釣魚(白身)の食べ頃と熟成 に実験結果を記しました。

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