アヤメエビスの味/高知県土佐清水市での釣果

アヤメエビス in 足摺港
遠くに旅して釣りをすると、初対面の魚に会えるのも楽しみの一つです。この魚も、釣り上げた瞬間、なんだこりゃ、の驚きがありました。紅白幕のような派手な紅と白の縦縞が鮮やかで、熱帯に近づいたことを思いました。

硬い鱗を剥がす際に、2尾でそれぞれ一度、棘の刺さる不幸に見舞われました。事前に調べて知っていたのに、です。なかなか手強い奴です。傷が痛みそうだったので、麻酔剤入りの キシロA軟膏 で処置しておきました。

釣獲後に即締め脱血、ヘッドレスにして冷蔵、と基本の処理した魚です。食べる時点では紅白の縦縞模様の色合いは、少し落ち着きを見せていました。

アヤメエビスの腹腔内脂肪塊
大小2尾のサイズの違いが、腹腔内に表れていました。小サイズには無かった腹腔内脂肪が、大サイズにはしっかり詰まっていました。

これで味に期待していいのかというと、それは魚種次第なのです。腹腔内に脂肪塊の多い魚でも身肉には薄いことも少なくないのです。そうなると、せっかく貯えた脂肪は、刺身では口に入りません。

とりあえず、そのことは脇に置いて。

刺身 (釣獲5日後)
アヤメエビスの刺身
身が硬そうだったので、薄めの平造りにしました。手元にアジ出刃しか無く、身を崩してしまったので意図が狂いました。

食感は、未だコリコリ感が残る程度で、熟成もある程度進んでいたはずですが、、。

白身の刺身で、生まれて初めてほのかな「酸味」を感じました。うーーん、としか言えません。もちろん食べられないような酸っぱさではないのですが。体調のせいか?

青背(赤身)の魚では、鮮度の良い時に感じるのが普通ですが、白身魚にも同様の乳酸の生成があるのでしょうか?

身には脂もあるのですが、旨さを感じる脂ではないようです。脂肪酸組成の違いなんでしょう。

ほのかにクセもあり、特段の美味とは言えないというのが私の感想でした。もちろん、しいて言えばという程度のケチ付けです。

鱗も骨も硬い魚なので、無理に刺身にまでしなくても良いのかな、という印象です。

酒蒸し (釣獲5日後)
アヤメエビスの酒蒸し
小さい方は、塩を振ってしばらく置き、鍋に料理酒を注いだ中で、蒸し煮にしました。

火が通ったかな、の寸前で止め。余熱で、優しく火を通します。硬い皮も破れずに仕上がったのは偶然の幸いでしょうか、新鮮過ぎたら破れていたかもしれません。

それにしても奇麗でおめでたい雰囲気の魚です。愛でた後は食味です。骨離れの良い身を一口運んで。

香りも臭いも感じない、無垢の白身です。口中に旨味が拡がります。白身の身よりも皮から出る旨味のようです。硬い皮のコラーゲンが軟化して旨味を発出するのか。

身の方もウマイには旨いのですが、皮ほどではありません。それでなのかと気づいたのが、刺身の味の不満足の原因です。旨い硬い皮をはいでいるのですから。この魚は、どうやら皮付きの加熱調理に向くようです。

赤い魚が好きな日本人には、目と舌を満足させてくれる魚でした。この世でまた会うことがあるのかないのか。地元には居ない魚なので。

アラ汁 (釣獲6日後)
アヤメエビスのアラ汁
魚の腹腔内脂肪に関する研究報告(成分分析)を読んで、勇んで食すことにしました。その真鯛での研究では、腹腔内脂肪には身肉より格段に多いEPAやDHAが含まれているのだそうです。

煮れば脂が浮くこと必定なので、くどさを消すために薬味のネギは使うものの、醤油や味噌に頼らずに、塩と酒だけで味わってみます。昆布がないので、グルソーを少々添加しました。

食べる以前に、汁の表面には脂がたっぷり浮いています。EPA&DHA(推定)がこんなに摂れると思うと、ニンマリ。で、一口吸ってみると。

むー-っ、旨し。良い出汁が出ているのが分かります。わずかな身と皮も旨いーっ。やっぱり加熱調理向きです、あくまで私感ですが。美味に満足の逸品でした。

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