泳がせ釣りの活き餌は元気な方が良いのか
遊動仕掛け下端に降下した時 |
ショアでの泳がせ釣りの対象には、ブリやカンパチ等の青物もあれば、タチウオ、アオリイカetc.と、その対象はフィッシュイーターすべてに及びます。
その泳がせ釣りで使う活き餌は、元気が良いのと、弱っているのとではどちらが良いのか、意見が分かれます。ヤエン釣りのように完全フリーで泳がせる場合には、元気でないと広範囲を動き回れないので、生きが良い魚が向いていることに異論は無いでしょう。
それ以外の浮き流しやエレベーターなど、ハリスに引かれて不自由な動きでフィッシュイーターの捕食を待つ場合には、動きが完全に止まってしまうと活き餌としてのアピールがゼロになるのでNGですが、弱々しく動いている場合はどうなのでしょうか。
私は、それでも可と考えます。なぜなら、フィッシュイーターは通常、群れの中の小魚の弱った物や鈍重な物しか捕食していないはずです。彼らが懸命にアタックしても失敗することが多いのは、ルアーで釣ったフィッシュイーターの胃の中が空っぽなことが多い事実から分かります。
活き餌は、生きて動いてくれないと困りますが、元気が過ぎると仕掛け絡みや、意図しない潜降の原因になるので、運動を抑制することができないものか、考えました。
具体的に言うと、アオリイカ泳がせ釣りの活きエサ遊動仕掛け を使う際に、活き餌が元気だと潜ってしまい、活き餌浮かせ針 のフロートで浮かせておくことができないのです。その結果、本来の遊動機能が活かせないのです。
泳がせ釣りの活き餌のヒレを切る
魚の運動はヒレを動かすことで成り立っているので、そのヒレを切り縮めることで運動を抑制できると思いつきました。主な推進力となる尾ビレと、上昇下降の方向を決めると思われる胸ビレを、切ってみることにしました。
生きた魚体を切るのですから、あまり気持ちの良いものではありません。でも、そもそもフィッシュイーターに喰わせるために針掛けして泳がせるのですから・・。冷静に考えれば、食物連鎖の一部分を人為的に利用するだけのこと、そう考えることにします。
ヒレを切除したネンブツダイの泳ぎ実験
2020.10.15 9時~
供試魚 ネンブツダイ(釣獲時に口唇以外に傷の無い物)
① ヒレを切らない
② 尾ビレだけを切除(筋肉組織を避けた後部)
③ 胸ビレだけを切除(筋肉組織を避けた左右)
④ ②+③(胸ビレを片側だけ切除)
⑤ ②+③(胸ビレを両側切除)
実験内容
岸壁から約3m離して、遊動仕掛けの上端が水面直下に位置するようにセットして、水面下約0.8mの範囲で上下に自由に泳げる魚の動きを見ることにしました。
実験条件
針掛けは 下あご掛け で、失血はほぼ無いものと考えます。ヒレの切除部分からは失血があると考えられますが、生存時間の実験は行いません。
実験結果
① 単純に岸壁に向かって潜り、仕掛け下部のストッパー部分まで潜降しました。それ以下には、竿で止められて潜れません。
② 仕掛け上部に浮いてとどまる 活き餌浮かせ針 を引いて潜降することは無く、下の画像のように仕掛け上端でゆらゆら揺れるようにして仕掛け幹糸の周りを回っていました。2尾で2回実験しましたが、いずれも同様の動きをしました。
仕掛け全体を下げ(沈め)ても、仕掛けと活き餌の位置関係に変化は無く、タナを下げて使用しても、活き餌と掛け針の隔離が可能なことが確認できました。
この実験中に、柿の葉サイズのアオリイカが攻撃姿勢で底から浮いて来たのですが、想定外だったので、反射的に仕掛け全体を揚げてしまいました。続行していればリアルな実験ができたことを、悔みました。
③~⑤のテストは不要となったので不実施です。
考察
無傷のネンブツダイ①は、元々岸壁に沿った位置で釣りあげた魚ですから、古巣に戻ろうとするのが自然であり、危険を察知すれば潜降するのは当然のことです。①はそれを立証したにすぎません。また、弱ったり死んだりすれば、フロートの浮力で浮き上がることは、実験に依らずとも明らかです。
尾鰭を切除された②は、推進力のほとんどを失ったわけですが、体をくねらせることや他のヒレの動きで、少しは推進力が残っていたようです。ただし、フロートを引いて潜降することはできないことが明らかになりました。他の魚種での実験は未実施ながら、尾びれを推進力としている魚であれば、程度の違いはあっても同様の結果が得られると推察されます。
学術論文によれば、ヒレは元の形に再生するそうなので、切ることで失血死しないと考えられます。ただし、切断位置によって太い血管を切ると失血死もありえなくないように思います。活き餌の必要とする有効時間との兼ね合いで、適否が決まると考えられます。
失血死よりも危惧されるのは、弱々しく動く活き餌は、フグ類からの攻撃を早期に受けるはずで、活き餌としての有効時間が短くなる可能性があります。フグとアオリイカのどちらが先に目に留めるかは、基本は生息状況次第なので、アオリイカの生息密度の高い場所に仕掛けを投入するしかありません。
まとめ
活き餌の尾びれを切除することで推進力をほぼ失わせ、それにより任意の位置に留め置くことが可能であることが分かりました。このことから、活き餌浮かせ針 を使った アオリイカ泳がせ釣りの活きエサ遊動仕掛け を、目的通り機能させることが可能となりました。
フグ類からの攻撃を避ける方法は、容易には見出せないと思いますが、考えていく必要があります。
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