イボダイの味/和歌山県の魚


鮮魚より、開き干しでメジャーな魚でしょう。標準和名のイボダイと呼ばれることも多いのですが、通称の"シズ"で知る人も多いと思います。水分が多い魚は干物で食べることが多いですが、これもその一つです。

なので、産地以外では鮮魚が手に入ることも少ない魚です。普段は深い海の砂泥底に生息する魚なので、イボダイは岸からの釣りではほとんど釣れません。

季節によっては定置網に入ることもありますが、多くは底曳き網で獲られます。今回の魚の漁法は不明でしたが、産地は和歌山県だったように記憶しています。

たまたま釣り旅の帰りに立ち寄ったスーパーで見かけて安かったので、多めに買いました。パックから出して袋に移し、車内の冷蔵庫に入れて持ちかえりました。

塩焼き


GG(エラワタ抜き)に塩を振って、2時間ほど置いてから焼きました。一般的には塩を振ってから短時間で焼くことを勧められることが多いのですが、私は自己流で長めにしています。理由は簡単で、塩が浸透する方が美味しいから、です。

浅めに焼いたのは、脂がほとんど無いので締まるのを避けるためでした。箸で身を取ると、ジュースがしみ出しました。柔らかな白身を口に運ぶと、ほのかに匂うイボダイ独特の香りと香ばしさ。臭いと言えば臭いのですが、これがエボの香りです。

優しい旨味が口に広がり、久しぶりの対面の喜びと幸せを感じます。いゃー、やっぱりイボダイは旨い。頭と中骨以外は完食。3尾パックで231円(税別)ですから、1尾100円以下なので安いです。相場物の鮮魚ゆえに、たまたま"安さ"と"旨さ"が両立することがあるから、魚は目利き次第で面白いです。

開き干し (塩)

オーソドックスな塩干しです。魚と水の総量に対して1.25%の塩分のたて塩漬けでひと晩浸けました。折よく寒気が来たので、好条件で干せました。

干しあげた翌日に焼いて賞味しました。適度に水分が抜けて濃縮された旨味を、塩がなお引き上げて、、旨いですねーー。塩焼きの物より一回り小さいので、中骨1本だけ残して頭から尾までそっくり食べられました。この骨の柔らかさも、イボダイの好ましさをいや増しています。

右上と左下が塩干し  左上と右下が醤油味醂干し

開き干し (醤油味醂)

浸けダレ(以下の比率)に一晩浸けて、翌日干しました。


塩干しで旨いのですから、その上になお旨味を足すのですから、不味かろうはずはありません。醤油味醂の焼ける香ばしい匂いも、舌の期待を高めます。口に運ぶと、香りと味のハーモニーが口中を満たします。言葉は要らない、そんな気持ちになる旨さです。

ただ、白身の旨さを楽しむなら、どちらかというと塩干しの方が向いているようにも思います。単にモッタイナイという感じですから、お好み次第ではありますが。。


"エボダイの開き"の原料は、以前はバターフィッシュと呼ばれる別種の物が主流でした。それに比べると国産のイボダイは脂は無いけれども上品な旨味を持ち、かつ高価です。

一度も冷凍されずに出来上がった干物の旨さを楽しむには、やはり自作しかないでしょうね。手間は掛かりますが、これぞ贅沢でありながらローコストの自産自消です。

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