タチウオの味/和歌山県日高港での釣果
そぼ降る雨の中の釣り場が忙しかったので、釣り上げて首をハサミで切って即〆して放置。長いものは2時間ほど経ってから釣り場でヘッドレスにして洗い、すぐにクーラーのキンキンの水氷に浸けて一晩、その後は+3℃ほどの冷蔵庫で保存し、釣獲93時間後に調理開始しました。初期の処理と保存が良かったので、時間経過をほとんど感じさせなかったのは、白身魚だからもあるでしょう。
今回の魚は 前回のタチウオの記事 に記した調理法は割愛して、新たな食べ方のみを記します。
腹身のてんぷら
小型で淡白なタチウオですが、そのフンワリの柔らかな身がカリッの衣の中から現れるその上品さはナカナカの物です。
1尾の魚の部分で言うと、この腹身はどんな魚でも美味な部分です。アイデア次第で、どのようにも変身してくれますから、知恵の絞り甲斐があります。
タチウオの腹身 |
腹身の吸い物
かろうじて箸で摘める、腹身のとろけるような柔らかさが楽しめました。きちんと出汁を作るべきだったと、大いに反省しました。インスタント物は素材を殺してしまいますね。
酢〆
今回初めて作ってみた物です。ネットにあったレシピを見ても味のイメージが湧きませんでした。浸け過ぎかと思われる43時間浸漬後に食べました。白身の酢漬けねー。
皮の銀色と身の白とのミックスで、白さが際立つ綺麗さが目を射ます。
口に入れただけでは甘酢の味だけですから、噛みしめてみます。ほー、なるほど。甘酢の中からほのかな旨味がにじみ出ます。皮もほどほどに柔らかくなって食べやすいです。
んー、これは寿司にしたら旨いかも。サクラマスとのコンビなんて、美しくて秀逸でしょうね。
醤油・味醂干し
ただでさえ薄っぺらいおろし身を干したのですから、焼き過ぎたら食べられなくなるので、注意して焼きました。
旨そうな焦げ臭が漂い始めたので焼き上がりです。それにしても可愛い、ママゴトのような料理ですが、さてお味は。一口含んで噛みしめると、、、適度に締まった歯ごたえとともに、じわーっと旨味が広がります。醤油+味醂という和食の最強コンビが、タチウオの旨みを包み込んで上昇していきます。やっぱりコレですよ、タチウオは。
タチウオはどんな調理をしても美味しく食べられますが、個人的にはこの干物が一番好きです。特に小型で脂が少ないと、塩焼きなどでは水っぽさを感じるのですが、干すことで水分を減らし旨みが凝縮されます。ただし小型なので三枚おろしに技術が必要です。
粕漬け
粕床に丸3日浸けた後に焼きました。
ホロリとほぐれた身を口に運ぶと、先に香りが嗅覚に訴えてきます。ほら、旨いよー、と芳香の先制攻撃です。そして口に入れると、んっ、旨い。魚、酒粕、酒、味醂、これらの旨味が渾然一体となって舌を優しく刺激します。市販品ではめぐり合えない添加物無しのピュアな味は、贅沢の極みと言っても過言ではありません。
粕漬けは白身の魚なら何にでも合いますが、特にタチウオの粕漬けは美味です。漬け魚にするのはそもそもは保存に向くからで、冷蔵でも10日程度は、冷凍ならもっと長期の保存が可能です。
私の作る漬け床は、練り上げた硬めの床ではなく、ミキサーで回せる程度に緩めます。なぜなら、練るのでは均一な床を作るのに苦労するからです。それとともに、白身の魚には緩めた弱めの風味が向くと思うからでもあります。また緩い床がまぶされた状態だと、冷凍しても空気に触れることがなく、魚の変質が抑えられます。
煮付け(加圧)
味と食べ易さとは直接の因果関係は無いものの、安心して咀嚼出来るというのは、舌の感覚に集中できて旨い不味いが分かりやすいです。骨ごと食べるので、身だけ食べるのとは味が違います。料亭では食べられない、別種のタチウオの味です。B級グルメ、ですか。
タチウオの骨は細く鋭く固いので、小型魚(3F未満)の場合は特に注意が必要です。ましてや尾に近い部分はとても食べにくく、捨てられることもあるかもしれません。でも圧力鍋を使えば、子供さんにも安心して食べさせられます。
骨せんべい
ノンフライ 電子レンジ加熱 |
三枚おろしの結果の廃棄物、かと思いきや、これが誠に美味です。パリパリという食感に加えて、凝縮したタチウオの旨みを塩味が引き立て、捨てるなどもってのほか、と言いたくなります。
塩水に浸けて数時間置き、天日で半日干してカラカラに。それから加熱ですが、脂で揚げるのと電子レンジで加熱と二つの方法がありますからお好みで。電子レンジでは、狐色になってから、もう少し加熱する感じです。中骨の下側には血管があり、血が残っていて生臭みの元になりますから、塩気は少し強めが向きます。干す前で0.8~1.0%の塩分にできると良いでしょう。
この料理だけは、小型のタチウオに向いています。ごっついタチウオの骨では・・、難しそうです。
今回のタチウオの味覚評価まとめ
率直に言って、やはり小型ゆえの物足りなさはありました。脂が皆無同然ということは裏を返すと水っぽいことにもなります。幼魚扱いされても仕方のないサイズですから当然のことで、それを補う調理技術を求められることになります。
記事にはしなかった塩焼きでは、如実に水っぽさが出ました。やはり脱水して旨みを凝縮する干物(醤油味醂)や漬魚(粕漬)、そして骨せんべい等が向いていました。
いろいろケチを付けながらも、処理と管理の良さがもたらす雑味のない自然な味は、釣り人のみが味わえる世界です。釣り人は自分で釣った魚を過大評価しがちですが、冷静に評価して、より良く食べることにまい進したいものです。
でもとにかく、延べ竿の脈釣りで釣ったプロセス × 食味 = 万歳三唱 ですね。
!! フィッシュイーターを釣り上げたら !!
フィッシュイーター(魚食魚)に共通することですが、捕食した魚を胃の中で高速で消化するために、釣り上げた姿で保存するとワタ焼けが早く、市販のタチウオでは、薄い腹身が破れているような物も目にします。ですから、タチウオに限らずフィッシュイーターを釣り上げたら、速やかに〆て(即殺)、腹ワタを取り除く必要があります。
追記 2020.10.31
2020.10.27&28に日高港で釣ったタチウオの料理の追加です。
フライ
旨いに決まっている調理法ですから、今までやらなかったのですが、今回 のタチウオが小さく、数も少なかったので、手を掛けてでも美味しく食べることにしました。
まず三枚におろし、長さ7、8㎝に切り、白ワインにくぐらせてから塩コショーをします。1枚そのままでは薄すぎるので、身の側に小麦粉をはたき付けて、2枚を押さえつけて置いて、接着します。そこからは普通に、バッターを付けてパン粉をまぶしつけてから、中温で揚げます。
揚げたてに塩を振り、レモン汁を垂らして口に運びます。カリッの次はフワッよりもっと柔らかで、トロリに近い食感です。口中に広がる旨味は、まさにタチウオそのもの。
大型のタチウオには負ける旨味を補って余りある、柔らかな美味しさは、小型のタチウオならではの味です。ウスターソースより、断然に塩レモンです。美味礼賛!!。
F2.5~F2.0のタチウオだって、調理次第で美味しく食べられるのです。侮ってはいけません。
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