岸壁で魚アラ捨て廃掃法違反事件の顛末記-1/2

違反対象となったエゾメバル(ヘッドレス前のラウンド)

釣魚の一部を海に捨てると、廃棄物の処理及び清掃に関する法律 違反により検挙されることがあるという実話です。

罪を素直に認めても書類送検されて、軽くて"前歴"、重ければ"前科"が付きます。後者は「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」が付くことがありますから、ことは重大です。

司法が見過ごせない程のゴミを私が捨てたのだろう、普通の人はそう思うでしょうが、そうではありません。私が実際に海に投棄したのは、ガヤ(エゾメバル)の頭部18g×2=36gです。

廃掃法違反事件の事実経過

1日目
私は、2022年8月12日の午後、北海道目梨郡羅臼町峰浜漁港において、当日羅臼漁港堤防上で釣り上げたガヤ(エゾメバル)15匹のヘッドレス処理をしていました。

ウロコを落とし終わり、次に頭を落として腹ワタを出す作業に取り掛かった3尾目。その時、4人の若い男たちが後方から駆け寄ってきました。

手にはチープなタモ網を持っていました。海をのぞき込んで「今、魚の頭を捨てましたね!?」。その時すでに頭は沈んだか流されたか、視界の外に消えていました。

「えっ、うっ。はい、捨てました。」「いくつ捨てましたか?」 ここからは既に検挙に向けた取り調べが始まっていたのです。

魚のアラを海に捨てるのが善行とは言えないが、質や量が海の許容範囲かどうかが問題、というのが、それまでの私の認識でした。が、「廃掃法に量の規定はない」と教えられたので、捨てたことが違反事実であると認めました。

証拠物件の計測準備

証拠を押さえて計測後に押収(任意提出)し、調書を取られる中では「しょっ引くか?」などという不穏当な言葉も、その場のトップの口から出ました。

身柄を持っていかれれば、風呂は無理でも3食タダメシは出るな、と瞬間考えたのも事実ながら、やはりトータル判断では、勘弁願いたいと思いました。脅し文句に私が負けたのかどうか、1日目の取り調べはスムースに終わりました。

翌日も取り調べを保安署で、という約束をさせられてから走り出しましたが、しばらくすると署の車に追い越されて停止を命じられ、現場に戻って追加の調べがありました。

ったく、要領が悪いんだから。聞けば、捜査チームの主任務は巡視船のクルーだそうな。道理で陸の事務仕事がチャチャッと進まないわけです。おまけに、上意下達の組織ですから、いちいち署に電話して上の指示を仰ぐのです。

終わって風呂に行き、食事が終わってベッドに入ったものの、頭がヒートアップして眠れません。現場を思い浮かべていたら、突然一人の中年女性の姿が浮かびました、天啓のように。

あーっ、あの女性(もしくは家族)だな、海保へ通報したのは。なぜか用もなく現場を往復した際に私と目が合ったのです。私の姿を見て話題にしたかったのでしょう。(すべて推測です)

午前3時過ぎにウトウトしたと思ったら、5時には目覚めてしまいました。

2日目
よほど神経が高ぶっていたようです。その結果としての朦朧とした頭での片道1時間の運転は危険、と判断し、出張取り調べを要請しました。

ちょうど折良く、助手席のパワーウィンドウが故障で閉まらず、それも理由に加えて、無理が通りました。

朝9時から始まった取り調べは、休憩をはさんで、午後3時過ぎには終わりました。事実は争いようもなく、もっぱら「法律違反はしたけれども、それが本当に環境に重大な悪影響があるとは思わない。海が許容してくれるだろうと考えてあの場所を選んだ。違法な悪事だと思うなら、暗くなってからやります。

というような供述に終始しました。それが良かったのか悪かったのかは、検事が判断することです。下手な抗弁や嘘は、素人には無理でしょう。

2日目が終わるころになって、ようやく流れが見えてきました。そうなんです。指導や始末書なんてヌルイことでは済まず、立件、書類送検になるのです。

終了後しばらくして、取り調べの責任者と思われる巡視船機関長から電話が来て、捜査の帰路に自動車事故を起こしたとの連絡がありました。

取り調べ中の雑談・・対 取り調べ官トップ

Q. 釣った魚の現場処理はどこまでが適法?。
 A. 一切ダメ。そのまま持ち帰るしかない。
Q. 足元に落ちたサビキ釣りのコマセを海水で洗い流して帰るのは?。
 A. ゴミ(残コマセ)を海に流し込んだら、廃掃法違反になる。陸上に在る物は、海保は関知しない。(陸は警察、海は海保)

この廃掃法が、陸釣りの遊漁にとって、現実とかけ離れたものであることが分かります。そもそも、法律(原案)は霞が関のお役人が、現場の実態を知らないままに作るのですから、無理があります。人が作り、人が運用する法律に完璧は無いのでしょう。

3日目
強度の寝不足が解消したので、3回目の取り調べには、私が保安署に出向きました。嫌な行程ですが仕方ありません。前日は無理を聞いてもらったのですから。

という予定でしたが、出発前の電話で「昨日の交通事故のため担当者が体の痛みを訴えているので、4日後に延期してもらいたい。」との申し入れがありました。

冗談ではありません。4日間もの無為な待機は無理なので拒否したら、本日午後1時を提案してきたので、受諾しました。さてどうなるのか、担当の交代で取り調べが続行するのか、はたまた打ち切り(始末書?)になるのか。どちらかでしょう。

後者は期待薄ですが、身上調書はできていて、その内容は判断するものの心証を悪くさせる内容ではないはずなので、淡い期待は持ちました。

罰金刑も想定できますが、不起訴(起訴猶予)もあり得るのですから、無理に立件して書類送検するほどの事件か? と私が思うのは身勝手ですが、勝手でもあります。

海上保安署の玄関には責任者の出迎えがあり、まずは任意提出したガヤのを返還を巡視船内の冷蔵庫で受けて、陸上の船用のゴミ箱に捨てました。これも大事な記録だと。

署に戻って、さっそく取調室(1)に座りました。手に湿布をした負傷捜査官によって前日の取り調べ内容がPCに打ち込まれていて、補足の質問への答えを反映させて、調書は出来上がり。

のはずだったのですが、私の違反事実はなぜ行われたのか、という部分で、取り調べ官がイマイチ私の真意を分からないようだったので、自分のノートPCのメモ帳に書いたものを持参して提示しました。(文末に採録)

これは、そっくり調書に打ち込んで取り入れてもらえたので、書いた価値がありました。でも、検察で「小生意気な能書きを垂れおって」にならないとも限りません。それでも言うべきことをきちんと伝えられないのは、悔いが残ります。

A4で10ページ以上に及ぶ調書の中身も、私が読んで赤ペンで訂正を入れたら、ほぼ全部がそのまま採用されました。日本語なら、ワタシ70年も使っているので、若い捜査官よりはマシな文章を作ります。途中からは、ココどうしますか? と尋ねられました。

3日間に渡る取り調べを終了して、互いに内心を独り言でつぶやきあって、本当に一件落着と相成りました。

直ちに車を出して走り出したら、5分ほどして携帯が鳴りました。「調書に重大なミスが発覚したので、戻ってもらいたい。」無視して走ったら強制的に連れ戻される可能性もゼロではないので、素直に戻って修正に応じました。

再度戻るのは嫌だから、もう一度見直ししてください、と言って待ちました。10分ほど後に、若い保安官に見送られて、署を後にしました。

羅臼から斜里まで走った後の風呂上り、その夜になって突然の発熱。うわーっ、コロナ、多分。翌日から海上勤務になる捜査員の皆さんの、ご無事を願いました。うつしたのか、うつされたのか、さぁどちらでしょう。

この後の流れは、事件地の検察から私の住所地の検察に移送されて、そこから呼び出しが来るのだそうです。その結末は後日に書きます。



※ 調書に採録された私の提出文

違法と指摘される投棄をした理由
1. 魚肉の鮮度低下を防ぐために、筋肉および皮膚等の可食部以外を、釣獲後早期に除去する必要があったから。
2. 地理不案内な旅人である私には、陸上で生ごみ(魚の廃棄部分)を適切に処理する方法を容易には知ることができなかったから。

投棄地に峰浜漁港を選んだ理由
1. 投棄現場に公道で到達できるから。
2. Google地図に、漁港に接して公園や24Hトイレが表示されており、現地にも立入禁止や釣り禁止の掲示がなく、外来者排除の姿勢が感じられなかったから。
3. 現地(峰浜漁港)は小規模で単純な形状の漁港で、外洋からの潮流の流入が期待できること。これにより当該投棄物は潮流に運ばれて拡散し、海中の生物(魚類、甲殻類、プランクトン、細菌等)の索餌、摂餌により短期間に摂取(食)、利用されて形を失い、自然の循環に包含され、環境に悪影響を及ぼす可能性がほぼゼロと考えたから。

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