泳がせ釣りの活き餌を任意のタナに置ける仕掛け

ショアの餌釣りの中では、泳がせ釣りはフィッシュイーターの大魚が狙える数少ない釣りです。その仕掛けにもいろいろありますが、ここでは活き餌の位置を自由に決めることができる仕掛けを紹介します。

泳がせ釣りの一般的仕掛け

泳がせ釣りでは、針掛けした餌の活き魚は、

水面からの深さを錘で決めて浮きで流す
錘を着底させてその上方に定置する
エレベーター仕掛けでメインライン沿いに泳がせる

主にはこの3通りのいずれかの方法を使用します。
これらには一長一短があり、それぞれの問題点を挙げると、

潮流に流されるので、狙った位置にとどめることが難しく、繰り返し行う再投入で活き餌を弱らせることになるとともに、忙しいです。
三又(トリプル)サルカン 等を使うのがオーソドックスですが、底からの位置が制約されるとともに、投入時の力が針に直接伝わるので、餌の活魚を弱らせることになります。
活き餌の垂直位置は餌の魚にお任せなので泳層は原則コントロール不能です。

例えば、水深10mの海域で中層の5mに活き餌を泳がせたい場合、

① 遊動浮き仕掛けで実現可能ですが、回収・再投入時に空中と水中で活き餌に繰り返し負荷がかかり、消耗させます。
② サルカンが干渉するので、投入困難です。
③ 浮きにより水面に、または錘で底に定置することは可能ですが、任意の中層に置くことはできません。

帯に短し襷に長し、とはこんな場面を言うのでしょう。では、どうすれば任意の位置に活き餌を置けるのでしょうか。

活き餌位置任意仕掛け

簡単に言うと、活き餌を浮きで任意の位置まで持ち上げて留め置く、という方法です。

投入時には泳がせ餌魚掛け針とハリスが全体の下部にあり、着水後は錘が沈んでウキ止めまで来ると、ウキが引かれて活き餌も沈んでいき、錘が着底後は、ウキ止め位置を中心にしてハリスを半径とする球状の空間を餌魚が泳ぐことになります。

浮きの浮力が過大でなく、活き餌魚の泳力が勝ると、一時的には浮きを引いて潜ることができますが、泳ぎを休むと浮きの浮力でウキ止め位置まで戻されます。
活き餌位置任意仕掛け 概念図

オモリ着底後の状態をポンチ絵に書くとこうなります。ウキ止めの直下に位置するのは 中通し木球浮き です。これが、投入時には錘の捨て糸直上まで下がり、オモリ着底後は浮いてウキ止め直下まで浮上するわけです。浮き近辺の構成は下の実物画像で表します。

活き餌位置任意仕掛け パーツ構成
概念図には無いシモリ玉が、この写真では使われています。投入後の活餌魚は自発的に水面に向かって浮上することはほとんど無く、より安全な海底に向かうのが通例なので、このシモリ玉は無くても支障がないのですが、きっちりタナをキープさせようとするなら使いたくなるでしょう。

概念図の例で、ハリスを0.5mとして錘の捨て糸を75cmにすると、ウキ止めの位置次第で、活き餌を海底から水面までの間どこにでも置くことが可能です。

ラインをフリーにすると、潮流が無ければ木球浮きの浮力でラインは鉛直に立ちますが、そこからリールまでの間は、PEラインでは緩やかに自立し、ナイロンやフロロのラインの場合には(海水より重いために)途中で垂れます。いずれの場合にも、弱め(ヒット時にはスムースに糸が出る程度)のドラグ調整で張っておくことが重要です。遠投の場合には、途中で垂れるのを防ぐために、ベーシックな(浮く)PEラインの使用が望ましいでしょう。その場合には タナボケしない浮き止め方法 をお勧めします。

ライン全体が斜めに立つことになると、設定計画水深を実現するためには、錘から浮き止めまでを長めにする必要があり、その倍率目安は次の通りです。

底の錘から木球浮きまでのラインの海底に対する角度によって、
 近投時ライン傾斜45°の時には、設定水深×1.4倍
 遠投時ライン傾斜30°の時には、設定水深×2.0倍

魚が掛かるとハリス元のスナップから浮きとラインに直接の力が掛かるので、メインラインはNY6号またはPE2号程度以上の強めの物浮きは硬い物、が必要です。浮きは硬さと浮力等の条件から、ここでは比重が0.6程度の木球浮きを使用します。  

木球浮きには、中通し穴に対して真横に アイを設置した物 も作れるので、そこに針付きハリスを結ぶ方が仕掛けがシンプルになります。これを使っても数kg程度の魚なら揚げられますが、摩擦に頼る構造に不安があるので、この記事ではエレベーター式にしてあります。

活き餌位置任意仕掛けの使い方

投げ込んだら一旦は錘を引きずるまで張り、ドラグを(急放出時にバックラッシュしない程度に)緩めておきます。基本は餌魚が釣魚の口に完全に入った後に針掛かりする向こうアワセなので、アタリ=糸が出る のを待つだけです。ドラグが鳴って糸が出たら、ドラグを締めて大アワセ、そしてフックオー--ン。釣法の性格上、釣り場の海底底質によっては根掛りが避けられないので、捨て糸は細目に、錘は"鉛"ではなく"小石"を使って環境に配慮したいものです。

活き餌位置任意仕掛けを使う場所

仕掛けの説明図で、水深10mを例に出しましたが、フィッシュイーターの大魚は、餌の小魚を追い込んで来たような状況でもないと、昼間は浅場にはなかなか入りません。

底が見えないような深場であれば、日中でも接岸する可能性があるので、泳がせ釣りをするなら、なるべく深い場所 が望ましいでしょう。

なお、大魚は食物連鎖のピラミッドの頂点付近にあり、数は少ないのですから、容易に釣れるものではありません。それだけに釣れれば歓喜。ボウズにめげずに、いざ釣らん!!

実釣事例紹介

大魚ではないものの、直近この仕掛けで釣った事例を紹介します。

泳がせ釣りの活き餌といえば小アジが定番ですが、イワシもキビナゴも手に入らずで、ハリメ(ネンブツダイorクロホシイシモチ)を釣ってこの仕掛けの釣りを敢行しました。

小潮で潮が動かずに苦戦しましたが、下げ潮が弱く動いている3時間弱の間、ポツポツと当たりました。針がかりしたのは18cmを筆頭に3尾の ヤミハタ。他のアタリは推定、エソ、フグ、でした。

ヤミハタ in 愛南町  2025.11.12
底から1~2mと5~6mを活き餌が泳ぐように2本の竿を出しましたが、前者に1尾、後者に同型が2尾釣れました。活発な時間帯は、入れるとすぐに食いつくことも度々あり、また根掛りで錘や針を取られることが頻繁なために、そして活き餌の 活かしバケツ の昇降にと忙しかったです。

この時の釣り場は水深が30mほどあったので、この仕掛けでないと、意図したタナに餌魚を泳がせるのは無理でした。また、結果を見るとタナは底から1~6m(以上)と広いことが分かりました。

狙いはオオモンハタでしたが、餌が下限サイズのハリメだったので、18cmのヤミハタでも仕方ないでしょう。それにしても小さな体で金魚を襲って丸のみする姿は、実見できればなかなかの迫力でしょうね。

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