イチジクを簡単発酵で乳酸酢に

イチジク果実 品種不明
いちじくを庭に植えた経験のある人は分かると思いますが、豊産種のイチジクは、大量に着果して熟します。おまけに日保ちしません。ご飯代わりに大量に食べることもできません。なぜなら、ペクチン(水溶性食物繊維)を多く含むので、食べ過ぎると下痢します。

また、いちじくの果実や樹液に含まれる"フィシン"強力なタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)、その分解能は凄いです。使用量と時間が多すぎると、食肉が融けてドロドロになってしまいます。その能力を適切、有効に使う方法も試験中ですが、そちらは冷凍保存物でできるので、また手が空いた折に。

イチジク果実を木成りで放棄すると、ハクビシンの餌になって彼らが増えてしまうので、我が家では ハクビシンの駆除 もしています。

害獣に負けずに、せっかく成る恵みのイチジク収穫物を有効に自家利用するために、"乳酸酢"を作りました。最低限の手間と道具で作れます。使う物は、ミキサーと一般家庭にある調理器具程度の物です。

イチジク酢(乳酸酢)とは

イチジクから酢を作る方法は二通りあります。プロのように作るイチジク酢は2段階で、アルコール発酵させた後に酢酸発酵で酢酸(市販の食酢同等)を作ります。これを人為的に行うには、相応の知識や技術が必要です。素人がやっても、上手くいくこともあります。

残念ながらイチジク酢酸酢を食したことはありませんが、これだと、結果としてできる酢は酢酸であり、市販の穀物酢と同等の物と言えるように思います。ただ、同じ酢酸酢でも材料次第で風味が異なることは有り得るので、イチジク酢はフルーティーなのでしょうか。

ここで紹介するのは、そんな難しい酢酸酢ではなく、簡便な一次発酵のみで作るイチジク乳酸酢です。アントシアニン(ポリフェノール)由来のピンク色を含んだ酢ができます。作り方の基本は、完熟イチジクを粉砕して乳酸菌(種菌)を混ぜて常温に置くだけです。

イチジクの乳酸酢製法

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乳酸酢用 =左  右= フィシン用
1. 収穫したらサッと水洗いし、熟して柔らかい部分と未熟の硬い部分に分けます。その際に傷んだ部分は取り除きますが、皮を剥く必要はありません。

中心のドロリとした物は、前回仕込み分から転用した種菌。カットしたイチジクを少しずつ足して回せば水不要。
2. 柔らかい(甘い)部分のみをミキサーで粉砕します。その際に種菌(植物性乳酸菌を含むもの)を一緒に回して、均一に混ぜると、発酵がスムースです。

イチジク酢作り_仕込み時点
3. 広口瓶や漬物桶などに入れて、家内の冷暗所(20〜25℃)に置きます。空気が出入りできる程度に口を覆っておきます。

イチジク酢作り_仕込み翌日撹拌前

一旦12時間後には、瓶の口から少しあふれましたが、翌朝にはかさが減っていました。発酵でできた炭酸ガスの泡が見えて、既に酸味も出ています。

イチジク酢作り_仕込み翌日撹拌後
撹拌すると、仕込み時に近いレベルまで下がりましたが、炭酸ガスを含んでいるので、多く見えます。食べると、未だ甘みもあるので、甘酸っぱい美味です。

4. 1日1回、撹拌により天地返しして空気を混ぜ込みます。表面が白く幕を張ったようになっても、それは産膜酵母(さんまくこうぼ)という酵母菌の一種なので、構わずに撹拌します。

撹拌を1日忘れて放置した結果
日々味見して、酸味が強く(甘味は弱く)なることを確認します。

イチジク酢作り_仕込みから15日の撹拌前
5.
仕込みから約2週間、産膜酵母の発生が弱くなる頃には甘さが無くなり、ほぼ酸味だけになり、乳酸酢は完成領域に入りました。発酵にしたがって固液分離していましたが、分離が見られなくなりました。量が減ったのは、化学反応でできた炭酸ガスが抜けた分と考えられます。

イチジク酢_PH測定
簡易測定 ですが、この時点でPHは3.3くらいでしょうか。この程度のPHが下限のようなので、完成が確認できました。

これ以後も、わずかながら発酵が進むので、米糠の糠床と同じように、時々は撹拌しましょう。撹拌を怠ると、表面でカビや酵母が活動して変質する危険があります。(常温でも保存できますが、冷蔵すれば変化が抑えられて、緩慢になります。)

注意 30度程度の温度下で糖分が十分にあると、活発に発酵が進み、炭酸ガスが発生して膨張するので、仕込み容器は余裕のあるものを使いましょう。(写真の事例は、常時28℃±0.5℃の室内で管理した物です。) 保存中も、蓋はきっちり締めずに、空気が出入りできる程度にゆるく締めておきましょう。

乳酸酢の完成品と言っても、澄んだ食酢とは趣を異にします。固形物の比率が高いですが、調理で使うのに問題があるようなら絞って、、、ですが、我が家では、そのまま使います。酢物、甘酢、タレ、煮物、、、何でもOKです。

なお、濾して固形物(乳酸菌の餌)が無くなると、発酵は止まり味の変化がほぼ無くなると思われます。未経験なので、保証はできません。

※ 1.で分けた硬い部分は、別の利用 <蛋白食品軟化剤> に向けます。硬い肉が柔らかくなってオドロキです。

イチジク酢の利用

マクワウリのイチジク酢漬け
未殺菌のイチジク酢は、合成してできた酢酸酢のように酸っぱい だけでなく、発酵熟成期間次第では原材料由来のフルーティーな香りや甘味などがわずかながら残っていることがあります。これが邪魔になるような使い方には向かないので、若いイチジク酢では野菜や果物などの酢漬けに利用すると活かせます。キュウリの酢漬け=ピクルス用の食酢として使うのがおすすめです。調理用では、あえ物などに使うと、イチジク酢そのものの特徴が出ますが、加熱すると特徴はほとんど隠れます。

マクワウリ in イチジク酢
一例ですが、マクワウリのうらなりの未熟果を、常温下でイチジク酢に漬けました。翌日以降いつでも食べられます。1週間も経つと内部までしっかり酢漬けになっています。少しは甘い実だったので、乳酸酢が外から染み込んだだけでなく、中の糖分まで酸に変わったのかもしれません。

イチジク酢造りのいろいろ

乳酸菌は自然界に普通に存在する常在菌ですが、一度発酵に成功した物(たね)があれば、それを順に転用して生かしておくことで、楽に維持できます。

自家の例で言うと・・数年前にザワークラウトを有塩で一度作りました。その液を次の無塩ザワークラウトに種菌として使い、それをまたタマネギのみじん切りに移して冷蔵庫に保存しています。

乳酸菌が必要になったら、乳酸タマネギ(液)を種菌として使っています。

初めて、種菌無しで作るのなら、内部まで腐敗していないイチジク少量(数個分)を粉砕して、天然由来の乳酸菌を常温発酵させて、酸っぱくなったら成功です。それを種に使えば、後は失敗なくできるはずです。酢酸菌も常在菌ですが、アルコールが無いと働きにくいので、たいていは乳酸菌優勢となるはずです。

万一、酢酸菌が優勢になって酢酸ができても、乳酸同様の食用となる有機酸なので、食べても問題ないはずです。食べ比べれば味の違いが多分分かるはずですが、、。

野菜漬けの糠床と同様の植物性の乳酸菌は強い菌なので、保存はさほど難しくはありません。食用としても、胃酸に耐えて小腸まで届くので乳由来の菌より有用と言われています。

なので、イチジク酢が出来上がっても、流通、販売する必要が無いなら、殺菌(して保存)する必要もないでしょう。逆にモッタイナイですね。

というわけで、実に簡単な乳酸酢づくりですが、酢酸のようなツンと来るようなキツサが無く、マイルドでありながら、酸の強さ(解離定数 pKa)としては"しめさば"も作れる、酢酸より強い優れ物です。

(免責) ここでは、経験に基づき情報提供しましたが、食の安全を保証するものではありません。サイト運営者は責めは負いませんので、全て自己責任でご利用ください。

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