磯ガニを合法的に捕獲する in 静岡県=理論編1/2

遊漁者の行う釣りにまつわる漁業法関係の法律違反に関する罰則は、意外に厳しいです。密漁という意識の無い遊びのつもりでも、検挙されることがあります。

捕獲対象物や漁具・漁法に関する規制は都道府県(地域)ごとに違いがあるので一概には言えず、ネット上で紹介されている捕獲・採取方法でも、要注意です。知らなかった、では許されません。

一例を挙げると、静岡県の伊豆半島南部の南伊豆地域では、フジツボ、カメノテ、クボガイ、クマノコガイ、ホンダワラ等まで共同漁業権の対象となっていて、組合員以外が採捕すると「密漁」になります。

この記事の主題は甲殻類で、しかも名は有っても知らないような磯ガニなので、さすがに静岡県内では漁業権の対象にはなっていませんから、採捕すること自体は違法ではありません。

ただし、別の定めで漁具、漁法の制限があるので、これもクリアしなければなりません。静岡県内で遊漁者が行える漁具・漁法 は以下の7種類のみです。

1. たも網又はさで網
2. やす(水中眼鏡を利用する場合を除く。)
3. は具(火光又は水中眼鏡を利用する場合を除く。)
4. くまで(幅15センチメートル以下のものに限る。)
5. 投網(船舶を使用する場合を除く。)
6. さお釣又は手釣(から釣を除く。)
7. 徒手採捕

遊漁者が使える漁具・漁法in静岡県 静岡県公式ホームページから転載

一般的に、磯の小さなカニを捕獲するなら、徒手採捕、たも網、竿釣り、でしょうか。どれも捕獲自体を遊びで楽しむなら良いのですが、逃げ足の速い磯ガニですし、一匹ずつでは手間がかかります。

ネットで探すとペットボトルで自作する"びんどう"なる物が見つかります。これを設置しておけば、楽に沢山獲れそうです。

ところが、コレは前述の7種の漁具漁法にはありません。つまり、静岡県内では使用不可、使えば違反ということになります。

さてさて、どうするか。んーーー。なにげなくAmazonをのぞいていたら、、こんな物 がありました。誰が考えのたか、脱帽。この発想はイケます、多分。

でも、違反漁具に当たらないのでしょうか、これは。"たも網"でもなければ"差で網"でもありません。形の上では。カゴに近いと指摘を受けそうです。

ならば、と考えたのは、タモ網の中に寄せ餌を設置して浅い海に沈めて置き、磯ガニが寄って群がった時に、素早く持ち上げて掬い取る という方法です。

タモ網ですから柄も付いて、完全なるタモ網です。文句が付くとしたら、寄せ餌の併用です。併用にもやり方はイロイロ考えられそうですが・・。

とりあえず、行政庁に照会しました。HPからメールで。

Q・・・・・・・・・
遊漁者の行う海産生物の捕獲方法についてお尋ねします

静岡県漁業調整規則第43条で指定されている漁具の内、たも網及びさで網の使用にあたり、捕獲が適法な対象生物を誘引するために寄せ餌を併用する行為は適法ですか。

ご多用中恐縮ですが、メールによりご回答くださるよう、お願い申し上げます。 
・・・・・・・・・Q

これに対する回答は
A・・・・・・・・・
お問合せのあった件について回答します。
水産動植物の採捕の際、餌に集まってきた水産動植物を、たも網及びさで網を用いてすくって採捕する方法は可能です。

ただし、たも網やさで網を用いて寄せ餌に集まる水産動植物を絡ませて採捕する方法や、餌と一緒に沈めておいたたも網やさで網を水産動植物の蝟集に合わせて引き上げ採補するといった方法は、規則第43条で規定する漁具、漁法とは異なるものとされており、禁止しています。

具体的な採捕方法でご不明な点等あれば、再度、水産資源課まで御連絡ください。

上記については静岡県水産資源課HP
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-430/untitled.htmlに掲載しておりますので御確認ください。

遊漁を行う際は、堤防や離岸堤、港湾など安全上の観点等から施設管理者が立入制限をしている場所が多いので、十分御注意ください。

静岡県水産資源課:〇〇
TEL:054-221-2738
・・・・・・・・・A

おーっ、なるほど。なかなか厳格な規制です。

投カニ網 はダメ。たも網の上に寄せ餌を置いて、一緒に掬い取るのもダメだと。当然 魚すくい網 もNGと解釈できる回答です。

実は自分の構想では、手持ちのタモ網の中に寄せ餌を置いて誘引し一緒にすくうこと、を考えていました。漁具自体はタモ網のみなので、可能かと考えていました。が、ダメとなれば、別の方法を考えます。

2度目の問い合わせ
Q・・・・・・・・・
Re:水産動植物の採捕の方法について-再質問

ご回答いただいたことについて、再度お尋ねします。

> 餌と一緒に沈めておいたたも網やさで網を水産動植物の蝟集に合わせて引き上げ採補するといった方法は、規則第43条で規定する漁具、漁法とは異なるものとされており、禁止しています。

これに関する具体的な質問です。

岸壁から釣り竿等で届く範囲内の海中に、寄せ餌のみを垂下して留置し、それに蝟集した、採捕が適法な水産動物をタモ網ですくう場合、以下の1.2.は適法ですか。

1. タモ網により対象動物のみをすくい取って採捕する
2. タモ網により対象動物の採捕と合わせて寄せ餌の回収を同時に行う

ご多用中恐縮ですが、メールによりご回答くださるよう、お願い申し上げます。 
・・・・・・・・・Q

これに対する2度目の回答は
A・・・・・・・・・
お問合せのあった件についてですが、△△様からの御質問にあった採取方法は、こちらが回答した「餌と一緒に沈めておいたたも網やさで網を水産動植物の蝟集に合わせて引き上げ採補するといった方法」とは異なるかと存じます。

△△様からの「岸壁から釣り竿等で届く範囲内の海中に、寄せ餌のみを垂下して留置し、それに蝟集した、採捕が適法な水産動物をタモ網ですくう」方法については、静岡県漁業調整規則第43条で規定する漁具、漁法に該当しますので水産動植物の採捕は可能です。

しかしながら、メールからは具体的な方法や規模等が不明であり、寄せ餌の留置の仕方やその設置期間によっては、環境あるいは船舶航行に対する影響が想定されます。
その点につきましては、他の機関に御確認いただきますようお願いいたします。

メールでは具体的な方法や規模について相互に確認することが難しいため、御不明な点等あれば、電話による照会も御利用ください。

静岡県水産資源課:〇〇
TEL:054-221-2738
・・・・・・・・・A

しめくくりは
・・・・・・・・・・
ご回答ありがとうございました。

フィールドワークの際に無意識のうちに違法行為をする愚を避けるためにお尋ねしましたが、未実行ゆえに事の詳細を挙げての電話による質問は致しかねます。

法令解釈の概略はご教示いただきましたので、これに基づき適法に行う所存です。もとより、他に迷惑を及ぼすことは本意ではありませんので、ご懸念には及びません。

この度は、ていねいな回答をくださり、ありがとうございました。
・・・・・・・・・・

以上のやり取りで判明したことは、「寄せ餌に集まったカニをタモ網ですくい取る場合には、寄せ餌とタモ網を一体使用するのでなければOK」です。なお、この情報の利用における責任は一切負いませんので、実行される場合には直接ご確認ください。

磯の小ガニを獲っていて「漁具・漁法違反」で検挙されるなんて、前歴アリ で 起訴猶予 処分歴のある私は絶対に避けなければならないので、ここまで調べて記録を残さざるを得ません。


時は真冬。磯ガニの姿は見えませんから、実行は春を待たなければなりません。ただし、準備は進めます。

簡単なようで悩むのが、寄せ餌の設置器具です。海中の任意の位置にとどまり、カニが少しずつ餌を食べられ、破壊されにくい給餌器をローコストで作ります。

磯ガニ誘引用給餌器

5~10㎝四方で5~10mmメッシュのステンレス製のもち焼き用網のような物2枚で餌を挟んで海中に吊るす。これが目指す姿だと考えて素材を探しましたが、安価で適当な物は発見できずに、こんな素材にたどり着きました。

ポリプロピレン製のネット by ダイソウ

これを切って、ほつれ防止のために端を火であぶり、袋状に2枚重ねてからステンレス硬線で作った枠で3方を縫い合わせるように囲い、両端をループにしました。最後にループとネット上端をスナップスイベルで留めて完成です。

磯ガニ誘引用給餌器 (例示収容物は15ml入り目薬)

素材がPPゆえに浮いてしまうので、枠のステン線に錘の役目をさせます。ステン線素材の網ようなに頑丈では無いものの、樹脂ネットとしては、まぁそこそこ丈夫でしょう。でもカニに破られるのも覚悟のうえです。網のコストは1つあたり10円以下なので。

コレを小ガニが居そうな波の立たない浅い磯場に、釣り竿から垂らした糸で海中に置き、磯ガニが集まったら、そっとタモ網を入れて、お食事に夢中のカニ達を、給餌器ごと下からサッとすくうわけです。泳ぎが得意ではないカニですから、容易でしょう。

さーて、♪春よ来い♪。今年は 1年の計 には書き忘れたのですが、これで捕獲した磯ガニで泳がせ釣りをして、クロダイ、キビレ、キジハタ等を釣りたいと思います。

今まで、泳がせ釣りの活き餌は小魚しか頭になかったのですが、磯ガニが加われば、釣果に近付けるか !?!?。

爺が磯でカニ獲りなんかしていると、カニが寄る前に孫のようなショウニが蝟集するかも。

そうそう、カニが獲れたら活かしておかなければならないので、その保管容器も作らねば、です。

釣り餌の自給自足は、ローコスト釣りには必須ですが、道具作りのDIYに頭と時間を取られます。それがリタイア人にはうってつけで、それも楽しみます。

関連記事
磯ガニ海面活かし器(準備中)

コメント