自作キャンピングカー居室の空調(吸排気と空気循環)
車中泊車両をキャラバンNV350で自作 - 9
自作キャンピングカーに換気装置が無いと、生活の質が下がる、では済みません。時には危険です。夏に排熱できないと熱中症の恐れがありますし、ガスの直火で調理すると一酸化炭素中毒の恐れもあります。
キャブコンやモーターホームなら居住を前提にゼロから設計されますから、当然に窓や換気装置があります。
これに対して、市販のベース車を改造で使うキャンピングカー、特に自作のDIY車では、換気装置は設置が難しいだけに、悩みどころになります。
後付けのエアコンやルーフベンチレーターも付けず、FFヒーターも無しで通年の車中泊をするのは、正直のところかなり苦しいです。真夏と真冬は、限界を超えます。→ 車中泊の最適温度と限界温度
業務でない遊びの車中泊なら、限界を超えてまでの車中泊はしないのが常識ですが、少しでも快適にという意味では、可能な限りの対策を講じるのも自然です。
ここでは、基本の 吸排気 と 空気循環 で改善を図った一例をシェアします。
今回は排気を強制的にすることで、陰圧により自然吸気し、併せて室内に空気の流れを作ります。手動ながらも、換気量調整も可能とします。
排気ファン & 吸気網戸
熱気や臭気が残らず、雨や虫が入らず、ベース車の負担にならないこと。こんなところが排気装置の必要要件でしょう。機能的な理想を言うなら簡単で、ファン付きの ルーフベンチレーター を設置することで一挙解決です。
ただし、これをすると、ほぼ間違いなく車高がオーバー(+4cmの許容基準)しますから、4ナンバーだったベース車は1ナンバーに変わります。
そして、当然のことに屋根の鉄板を切り抜くのですから、後々のトラブルの元を作ることにもなります。コーキングの寿命はわずか数年ですから。
それらのマイナスを考えた結果、私はサイドドアに窓付きの中古ベース車、NV350キャラバンを買いました。その小窓で換気をしようと考えたわけです。
NV350キャラバンを ベース車に選んだ のには他にも理由はありましたが、とにかく小窓付きのキャラバンは中古車市場には少なく、探し出した車は6人乗りだったので、購入後に乗車定員を3人乗りにする 構造変更車検 を受けました。
苦労して得た小窓ですが、その窓に取り付けるウィンドウファンがまた既製品には適当な物が無いのです。エアコンは鉄板キャラバンにはミスマッチと考えるので、はじめから除外しています。
窓付けの排気ファンは ルーフベントファン に比べると設置位置の関係で換気性能は劣ります。ネット上の記事では、PC用の低電流の小さなファンを使う例が散見されますが、はっきり言ってゴミ。私は自作初代キャンパー エブリイ で失敗経験済みです。
換気に使用するファンは、風量とエネルギー効率で選ぶなら、台所用の 15㎝ファン が正解です。安価で風量は大ですから。ただし、実際に使うには難点があります。厚さ(奥行)が15㎝もあります。ちょっと、、使えないですね。
このタイプの消費電力がだいたい25Wですから、それに近いW数で選んだのが、厚さ5.5㎝で公称21.6Wの 4連コントローラー付PC用ファン です。風量がW数以上に落ちるのは、覚悟の上ですが、スリムさに陥落しました。
小窓は左右に一つずつ計2つあるので、左側を排気ファン、右側を網戸として、同時に製作しました。(窓形状から、左右の入れ替えは困難です。)
左=排気ファン木枠 右=網戸木枠 |
小窓の上下のレール内側にピッタリ納まり、左右は余る大きさに作った木枠で4連ファンを囲む形です。材料は余り物のコンパネで、左右と下を接着剤で接着し、上枠はビス止めで着脱可能にしてあります。網戸の方は普通の固定木枠です。
4連ファンの側面に凹があるので、ここに15mm角材を差し込むようにビスで固定して、取付木枠から外れないようにしました。
排気ファン木枠の上側に可動回転突起を取り付けて、これを窓のスライド上溝に差し込み、木枠下側には 丸棒ラッチ を1個取り付けて、下溝に丸棒を落とし込んで固定します。
窓ガラスの外向き湾曲以外の隙間はほとんどありませんが、木枠の周囲からの有害昆虫侵入防止のために すきま用テープ を貼ります。
ファンの停止中にはブレードの隙間から虫が侵入する恐れがあるので、ファンと木枠の間に挟み込むように、網戸の網も取り付けました。(網無しでも、常時低速運転するならOKでしょう。)
左 スライドドア窓 |
車外側への突出が無く、車内側もレール幅に収まったので、スマートと言っても良いでしょう。110円で買った黒色塗料が奏功しました。
右 スライドドア窓 |
車内の空気循環
右スライドドア窓の吸気口(小窓)から、(左窓の排気の陰圧で)取り込んだ外気を、一旦は後部に移動させるために、小窓の前を前方から後方に向って、扇風機 で送ります。
この扇風機は首振りなので、横付けすることで、上下向きの風を選べ、換気なら上向きで、人に当てるなら下向きで運転します。上向きにすることで、窓より上の天井付近に溜まる熱気を攪拌して排気することができます。扇風機は邪魔なので、非使用時は収納家具に収めておきます。
右後方上部へ流れてきた空気を、天井直下に取り付けた ブロアファン により、後部右から左を経由して、左側スライドドア小窓の排気ファンから排出されるように流れを作ります。(この風の流れは、就寝時にも快適です。)
電気設備の排熱排除
インバーターが給電ONの常態では、常に発熱しています。その排熱が電気室にこもって熱暴走しないように排気するのも、前記のブロアファンの役目です。
車内高熱時の対策
いくつものファンを使った上記のような人工的な空調も使いますが、実は夜間はともかくとしても、日中の温度上昇にはこんな程度の対策を講じても追いつきません。サイドドアとバックドアを開放して扇風機を回す方が、圧倒的に効果があります。
サイドドア |
バックドア |
そもそも鉄板製の車は、建物のような高機能の断熱を施すのは無理です。自作車では、ここに記した程度の工夫にとどめておくのも、一つの考え方かと思います。これとは別に、日射を遮って車体の温度上昇を緩和することも効果的な対策になります。→ 自作NV350キャンピングカーに搭載したソーラーパネルの遮熱効果
追記 2022.07.30
初めての長期使用の北海道(興部町)で暑くて寝苦しく、この記事に書いた空調をセットで実用運転しました。ファン3点フルパワーの運転で74.3w消費し、21:30に30.5℃の室温が、30分後の22:00には29.0℃に下がりました。30分で1.5℃の低下は小さくない効果だと思います。その後は、排気ファンだけをミニマムで運転したまま、眠りました。排気ファンの直下に 冷凍冷蔵庫 があり、その排熱を連続的に効率よく排気するので、かなり意味の大きな排熱装置のように思います。ただ、この運転を支える電力供給には、余裕のある システム が必要です。
感想 2022.08.02
わずか数年前と比べても、車中泊の旅人が増えました。旅先への無神経な迷惑行為をする者が増えた結果、車中泊族への風当たりは強いです。目立つ車で派手な旅をするのなら、それを受け入れるためのRVパークのような施設に行っていただきたいと思います。道の駅や公園の駐車場で仮眠するなら、目立たないように、静かに利用させていただくことが必要です。この記事に書いた空調設備は、自作するには手間のかかる物ですが、目立たず、迷惑をかけずに快適に過ごそうとすれば、やはり必要になります。狭苦しいニッポンにいる限り、仕方ないですね。
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